魚突き用銛先の材質と硬さ

魚突き用銛先の材質と硬さ

medium_11180443835

銛先の素材には様々な種類があります。

・ステンレス系
・炭素鋼系
・タングステン(これは例外)

など。

そしてステンレス一つ取っても、これまたオーステナイト系(SUS304など)やマルテンサイト系(SUS440Cなど)、析出硬化系(SUS630など)があったりと、その種類や特性は実に様々です。

この銛先の素材については、たくさんの突き師さんや職人さんが日々研究や工夫をしているわけで、今回私もちょっと考えてみようかなと。

まあみんな難しい事を言いたがりますが、

結局は魚が獲れればそれでよし

なんですから(笑)あんまり難しく考えることはないです・・・とか言いつつ、今日はかなり専門的な話になる予感。

photo credit: Matus Kalisky via photopin cc

[adsense]

銛先用の金属に求められる特性とは

硬さは必須

銛先に求められる特性というのはいくつかありますが、何はともあれ、 やはり “硬さ” が第一に求められる特性です。

ハタ科の魚の硬い頭骨を突いたり、または岩を突いたりすることが魚突きでは頻繁にあるゆえ、やはり銛先というのは硬いに越したことはありません。一発岩に当てたぐらいで先端が潰れきってしまい、刺さりが悪くなるようでは困りますからね。

硬すぎてもダメ

ただ、かといってあまりに硬い金属を使ってしまうと、今度は「割れやすく・欠けやすくなる」ために、これまた銛先には適さないということになります。

いくら硬くても、先端が欠けてしまったら結局刺さりは悪くなるわけで、それまた意味がないですからね。

このあたりが難しいところです。

極端に言えば、我々が普通に入手できる金属で最も硬い「タングステン」、こいつを銛先に使えばさぞかし良いんではなかろうか?と思った方も多いと思いますが、もし岩でも突こうもんなら一発で欠けます。経験者は語る(笑)

ただタングステンに関してはまだ諦めて無いと言いますか、まだまだチャレンジの余地はあると思ってまして。うまいこと衝撃を逃がすような接合方法で先端部分に利用すれば・・・とか、色々考えてはいます。それについてはまた後日。

高価過ぎてもNG

これは私見ですが、やはり銛先というのは消耗品ですから、あまりに高価な金属を使用することは避けたいですよね。

安価な金属で言うと、やはり炭素鋼系はステンレス系よりも安いです。

 

銛先に使われる金属一覧

・SUS440C
・ピアノ線(高炭素鋼)
・その他高炭素鋼(ばね鋼など)
・SUS630

一般的にはこんなところでしょうか。

ではそれぞれの解説を以下にて。

 

SUS440C

チョッキ銛などで最も多く使われている金属。

一応ステンレスではあるものの、かなり炭素も入っているのと通常は焼きを入れて使うことから、案外錆には弱い。

硬度は焼き入れ後、HRC50~60。

焼き入れに関しては、バーナーで炙る的な素人焼き入れでも案外硬くなってくれる。しかしそれだとおそらく硬度はさほど出てない。

カスタムナイフにも多用される素材で、価格は少々高め。

ピアノ線

チョッキ銛先の芯に入れて使われることがある他、パラライザーはだいたいピアノ線。私も焼き入りピアノ線をかなり好んで使う。

硬度はHRC60前後(のはず)。

炭素含有量は0.60~0.95%。

焼き入れ後のピアノ線はかなりの硬さになる。硬いだけではなく粘りもあり、銛先に使用するにはうってつけ。ただし高炭素鋼ということで、非常に錆びやすいのが欠点。

どこでも手に入り、かつ安価なのは大きな利点。

また品質も非常に安定しており、最初から焼き入りのものが購入できる(=間違いなく硬い)というのも非常に大きなプラスポイント。

その他高炭素鋼

工具鋼、ばね鋼など、その種類は非常に多いので、一概に高炭素鋼というくくりにはできない。ただ、銛先に使用される材質はそう種類もないため、ここではざっくりと「一般的な高炭素鋼」の話をば。

一例として、私の製作する羽根式銛先の先端チップは「ベアリング鋼」で、これも高炭素鋼の一つ。これを採用している理由は、その硬度と耐摩耗性が銛先に適しているのと、品質や硬度が安定しているから。

高炭素鋼ということで、総じて焼き入れ後の硬度が非常に高い。

物にもよるが焼き入れ後の硬度はHRC45~65。先述のベアリング鋼の場合、HRC58~62。

ただしこれもまたピアノ線と同様、非常に錆びやすい。

価格は様々ながら、安いものはかなり安く手に入る。

SUS630

析出硬化系のステンレス。

正直、専門外なのでよくわからない(笑)

一つ言えるのは、焼き入れ後(ただし素人に焼き入れは無理)でも硬度がHRC40程度と柔らかく、銛先に使うには適さない。

耐食性や靱性が高いので押し棒などには適している。

とはいえ、正直SUS630でないとダメだと言えるほどのメリットは無いように思う。高いし。

 

で結局どれが良いの?

と、まあ長々と語ってきたわけなんですが、ぶっちゃけ結論は出ないです(笑)。「決定版」になるような金属というのはまだ、私の知る限り存在しないですからね。

ただ個人的に色々試した経験から言うと、銛先として使うにあたって最も耐久性(潰れにくさ)が高いのはピアノ線かなーと。僅差でベアリング鋼などの高炭素鋼。

あれらは確かに錆びまくりますが、毎回水で洗って油塗っとけば全く問題なし。若干の錆びは砂浜にザスザス刺せば取れますし。

440Cも良いですが、焼き入れをちゃんと業者に出さないとしっかり硬くなってくれないので、いかんせんコストが高くつくのがネックですね。