エントリーNo.009 カジ様 【ジャックナイフダービー2015】
さて、良いサイズの黒鯛でエントリーして下さったのはカジ様!
私の住む瀬戸内でも非常に馴染みの深い魚ですね。
というか今からの季節はチヌ(黒鯛)かウマヅラしか獲れない次期が春まで続きます。笑
安全対策についても、しっかりとしたレポートを投稿してくださいました。
これまでにエントリーしてくださった数名の方々を見ていても思うことなのですが、安全面に対しトータルでしっかりと目を向けている方というのは、「事前準備」「起こるであろう危険の想定」「現場での対応」これらをしっかり網羅していらっしゃいますよね。
Contents
エントリーNo.009 カジ様
魚突き歴:2~3年
ペンネーム:カジ
エントリー部門: 写真
題名:もっともっと上手くなりたい!
レポート
1.突行レポート
· 魚種:黒鯛
· サイズ:48cm
· 重さ:未計測
· 海況(波の高さ、潮など):ベタ凪ぎ
· 天気:晴れ
<エピソード>
2015/12/7 ちぎれ雲の間から覗く日差しが眩しい。あったかい。
今年はあと何回こんな日に潜れるんだろう?
そんな事を考えながらエントリー。首のすき間からわずかに入ってくる海水が冬の訪れを感じさせてくれる。
透明度はこの場所にしてはかなりいい、5m底のマナマコの模様がはっきりと分かる。
「そっか。もうナマコ漁の時期か・・漁師さんに気を付けなければ・・」
心地よい陽気に身を任せて浅場(4~6m付近)を、地磯沿いにゆーっくりと進んでみる。
たまに目線の先に現れる30cmくらいのボラやバリ(アイゴ)が、私の姿を一見し、銛が届かないであろう距離を保ちながらゆっくり去っていく。
未だ人の恐怖を知らない小魚(メジナ、サンバソウ)は相変わらず岩の間を出入りし、無邪気に遊んでいる。だけど夏に比べて明らかに数が少ない。
「そろそろ潜り納めかなー」と考えながら水面移動を続ける。
磯場の端まで泳いでも、めぼしい魚はいなかった。いなかった訳ではないが、眩しい光の反射と未熟なスキルのせいで気づかれると同時に警戒心を持たれてしまう。
でも、日頃の社会のストレスから解放されて、こんなに素敵な海で泳げていると感じて正直満足していた。
そんな感じでぼーっと7~8m海底を眺めて泳いでいると、そこそこ大きな黒い影が砂地にぽつんと立つ大岩の割れ目に入っていくのが見えた。
すぐさま潜行開始。
割れ目を覗くと白い下唇が覗かせた。「チヌだ!」
右手の銛の先には小物用のパラライザー。しかし今日のパターンだと、一旦浮上してコソコソしてたら絶対逃げられる!
ゴムをMAXに絞って、目の上付近を狙って放つ。感覚あり。だがこの狭い割れ目からすぐに引き出せないのは分かっていた為、銛をグッと奥に押し入れてから一旦浮上。
下を見ると割れ目から大きな砂煙が舞っていた。
「ああ、なんか俺魚突きらしい事やってるじゃん」
アドレナリンが放出されてる瞬間だ。笑
何度か潜行を繰り返し慎重に回収を行う。手負いで逃がしてしまう程悲しい事はない。
岩からヌルッと出てきたその魚はなかなかの体高のチヌ(黒鯛)だ。
なぜか背中に穴が空いていた。笑
すぐにエラを抜いて血を出す。捕獲確定。魚突きで1番嬉しい瞬間だ!
帰りにさらにもう一尾追加しエントリー地点に戻る。
48cmでした。
皆さんはあるでしょうか?海で泳いでいてふと、
「気持ちいいなー」と思う瞬間。なんか自分が海の生物の一員になれたようで
すごく居心地がいい瞬間。私の1番好きな瞬間です。
2、私の安全対策
・魚突きを初めて2~3年の初心者です。
マイナー過ぎて誰も教えてはくれなかったこの趣味。命の危険があるからこそインターネットや限られた書籍で必死に得た自分なりの知識。皆さんの知識とすり合わせられればと思っています。
夜突き(電灯潜り)も行うのでその辺にも触れていきたいと思います。
心構え
まず私が要として考えている心構えは、"怖い"という恐怖心を常に合わせ持つ事。
魚突きを初めた頃は常に恐怖心との戦いで、"どうやって恐怖心を打ち消して海へ出るか?"という事ばかり考えていました。
回数を重ねていくうちに段々と海への恐怖心も薄らいで、好奇心の方が先立って行きます。「もっと沖へ出れば・・・」「もう少し海中で息を我慢できれば」「寝込みを襲えば・・」
好奇心とは時に怖いな・・と思います。死さえ恐れなくなってしまうからです。
この"怖い"という気持ちと上手く向き合い、危険と思ったらすぐに中止を決断する"勇気"を忘れない為に、私は海へ入る前に嫁子供の待ち受け画像をしんみりと眺めています。笑
当日の安全対策
◎水分補給
素潜り中は水圧の刺激で何度も放尿したくなります。放尿するのは生理現象なので仕方のない事ですが、放尿すると体温が奪われますし、体内の塩分濃度が上がり足がつりやすくなったりします。事前の水分補給が必要ですね。コーヒーは避けます。
※コーヒーに含まれるカフェインには軽い興奮作用や血圧、脈拍の上昇などの効果があるため水中での酸素消費量も若干増えると思われます。利尿作用もあり。
海中で喉が渇いた時に携帯用としてオススメなのが、赤ちゃん用のストロー付きのボトルキャップです。ワンタッチキャップ式のやつは海水の出入りがなく、大きさ的にもベストです。
◎風浪とうねりについて
私の場合は事前に気象庁の波予想を見て、風の向きと強さ、波周期、ここ数日の波の変化状況、波高、周辺の天気予報(数時間ごとの変化)などを確認し現地の状況を想像します。
ネットで海岸のライブカメラが見れる地域もありますのでそのような方法で事前にチェックするのもいいですね。予想で波が1.5m以上ありそうなときはやめます。
うねりに関して、基本的に波周期が10秒~数10秒あるものをうねりといいます。
yahooの波予想で”波周期”で黄色く表示されている部分がうねりです。
ただの風浪で海面のみ生じた波とは違い、周期の長いうねりは浅場では特に海底にまで力を及ぼします。
うねりの強い海中でテトラや岩穴を覗いていて、引き波により穴の中へ数秒でも引き込まれたらと思うと怖いものです。
○潮と地形の確認。潮には大潮→中潮→小潮→・・・とあります。
大潮の満潮後は大きな引き潮が生じますが、湾や入り江などのクローズされたポイントではその際外洋への大きな引き潮が生じる事があります。初期装備の方は特に離岸流と共にこの引き潮に注意が必要かと思います。
○エントリー・エキジット時、波が小さくなるまで、じっくり待ち、引き波や寄せ波を利用してエントリー・エキジットを行います。
海上の波は、複雑で一定の周期や速さのものだけが来ているのではありません。ふたつ以上の波は、互いに干渉して、峰と峰が合わされば大きくなり,峰と谷が合わされば小さくなります。この小さくなっとときが、エントリー、エキジットのタイミングです。
○波酔い予防。
私はポイントにつく1時間前に酔い止め薬(私はアネロンニスキャップ)を飲むようにしています。あとは、2mくらいの浅場では波による揺れが結構あって酔いやすいので、長時間浅場で行動しない。長時間水面移動をしない。
○波のない場所の探し方。
着いてみたら思いの他波が高いなんて事はよくありますよね。
波のほとんどが風によって生じます。風が吹き続けているとその海域に大きな波が現れます。「諦めて帰るか・・」「危険だがせっかくだから入ってみるか・・」
ちょっと待って下さい。風下側となる山陰などを探しましょう。波は風によって生じている訳ですから、風が吹いている方向を確認してその風を遮るものの裏に行きましょう。島に行って北東は荒れてるのに南西は凪って事はよくあります。
○海難救助の番号を知っていますか?118番です!忘れた場合は119番でも構いません。
道具等
海パン+シュノーケル+マスク+竹ヤスでも魚突きはすることは可能です。というか最初はそのような装備での魚突きは誰もが通る道の入口ではないかと思います。
私も最初はこの装備でいって見事にハマりました。初期装備と勝手に呼んでます。
しかし実際に身体ひとつ海に出ると道具のありがたさ、安心感はかなり実感するものです。
道具に関しては皆さんが既に参考となる内容を載せられているので、特筆すべき内容はそんなないかなーと思います。
☆フィン☆
自分の能力に応じたフィンを履きます。以前フィンを履いていないダイバーが急深な入江となっている場所の引き波に引き込まれて帰ってこれないという事故がありました。
フィンは横・縦移動どちらにも必要なので必ず履きましょう。ちなみに私はスーパーミューというゴムフィンを使っています。小回りが効きとても柔らかくフィンワークに自信がなかった私でもすぐに履き慣らす事ができました。
☆ウエイトベルト☆
緊急時はワンタッチで外せるものが必須ですね。これはジャックナイフさんの以前の記事にも紹介されていた為簡単に自作できました。詳細は2014/5/30 "魚突き用ゴムベルトはこれで代用できます"を参考にしました。ホームセンターに売っているゴムベルトにプラ製ワンタッチバックルを取り付けただけのものです。
私的に道具は出来るだけ自作する方がいいですね。緊急時に心置きなく破棄出来て「どうせまた作ればいいやー」って思えるからです。
☆ナイフ☆
水中でフロートラインや漁網などに絡んでしまった際の切断や魚を〆る時に使用します。
魚を〆る用の小型ナイフとライン等切断する緊急用のダイビングナイフできれば2本あるといいですね。錆びてないか等のメンテナンス・チェックは必要です。
使うナイフは確実にロックし装着できるものかつ取り出すときはカシャっとすんなり取り出せるものを条件に使用しています。
夜突き(電灯潜り)
※店長注※
夜での潜り(ナイトダイブ、電灯潜り)については、下記でカジ様が書いてくださっているように、条例上灯火類の使用が禁止されている都道府県も多く、その点に関してはくれぐれもご注意頂ければと思います。
日中潜り続けていると、夜の海の中も見てみたい!と興味を持ちました。
おそらく他にも同じように興味を持った方はいらっしゃるかと思います。
ただ、夜の海は日中に比べ更に危険が増しますし情報が少ないです。
○波のない状態か。ベタ凪ぎ一択。海中限られた視野の中波に揺られていると、どちらに進んでいるのか本当にわからなくなります。
○日中潜り慣れていて、地形を把握している場所か?陸からも海上からも見通しの良い場所か?日中の状態の把握と観察が大切です。船の往来が無いかも大変重要です。
漁港の出入り口や航路の妨げとなる場所は絶対にNGです。
○ダイビングライトは適切な明るさか?私が最低限恐怖を抑えて潜れる明るさはワイドタイプのライトで最低1000ルーメン。スポットタイプで最低1500ルーメン程です。
○電池は充電されているか?リチウムイオン充電池を使用しています。大きな光量が得られる代わりにデリケートな電池なので取り扱いは注意が必要。
○ライト点灯時間の把握。実際の表記の点灯時間はあくまで目安なので陸上で一度連続点灯させ、把握している必要がある。又、一部ライト(爆光ライトと言われるもの)には充電が減ってきたら突然消灯する物もあるので注意が必要です。
○予備ライトの準備。エントリー地点の目印ランタンの準備。エントリー地点の目印ランタンはかなり大事です。外灯などあれば別ですが無いところで海に入るのは自殺行為です。水中からだとマジで場所分からなくなります。設置場所は”高くて風等で倒れない場所”
低いと海面からであれば波で見えなくなる為。
○相方はいるか?相方と共に行動しましょう(バディシステム)。その他方法としては、陸上で監視役でだれか待機してもらいましょう。
○事前に身近な人へ海へいく連絡をしておく。これは日中、夜間変わりなく行っていた方がいいでしょうね。
○1ヶ月以内に怖い番組や映画を観ない。海の中でふと思い出すと周りが気になり出して魚突きどころではなくなります。私の中では意外と重要(笑)
○ダツ
遭遇した事はありませんが危険生物です。ライトの明かりに突っ込んできて体に刺さるという事故が過去起こっています。対策として水面横方向にあまりライトを照らさない。
ライトは体から離して持つ。
☆夜の海は日中とまた違い幻想的で魅力的ですが、大変危険なものでもあります。
必ず2人以上で行きましょう。また、地域によっては夜間禁止、水中ライトの使用を禁止している場所もありますので、水産庁HPで調べてください。分からなければ管轄の漁協に問合わせてみて下さい。
3、危なかった経験
○拘束
以前フロートを使わずウエイトベルトに、いろんな物をぶら下げて潜っていました。
メグシ、網袋、ライトなど・・・。ある日テトラ付近で潜ってテトラの周りを這って移動していたら、網袋がテトラについている岩牡蠣に引っかかり動けなくなってしまう事がありました。一瞬ヒヤッとしましたが、力を入れて引っ張ったらその時は外れました。
それ以来フロートを使用し、道具は極力フロートにぶら下げるようにしています。
○耳から出血
私はあまり耳抜きが上手ではありません。ある日耳抜きの練習も兼ねて3~6mくらいの場所で何度も耳抜きを行いました。その結果、エキジット後から左耳の違和感(音がこもって聞こえる感じ)がありその日の夜激痛でなかなか寝付けませんでした。翌日耳鼻科に行くと、耳抜きのしすぎで耳から出血していて中耳炎になりかけていると言われました。抗生剤を飲んだら良くなりましたがしばらくは潜りを自粛しました。
又、別の日水中で鼻をつまんで耳抜きを勢いよくしてしまい鼓膜が破れたのか?何らかの形で内耳に水が浸入したんでしょうが、エキジット後まっすぐ歩いているつもりなのに右に寄って歩いてしまう(ぐるぐるバット5回回って歩いたような感じ)平衡感覚が失わてしまいました。しばらく30分ほどじっとしていたら治りましたが、さすがに車の運転は避けました。
○毒魚に刺される
私が潜っている地域にはアイゴ(背びれ腹びれ殿びれに毒あり)が多く生息しています。
手を出さなければいいのですが、坊主逃れにと思って獲った獲物に水中で刺されました。
その時はどうもなくても後から患部の腫れと痛み、身体のだるさがありました。
刺された時は、すぐに患部の毒を搾り出し、刺された時点で中断するのが賢明かと思います。
私にとって魚突きは気軽に行えて非常に楽しい趣味でした。しかし色々と調べると様々な危険があったり、その地域のルールがあったりと非常に深い趣味だなと思っています。
皆さんが安全に魚突きを楽しめて、この業界が更なる発展を行う事を願っています。
長々と失礼しました。最後まで読んで下さった方ありがとうございます。